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■最近の動向 サイトカインは生体においてネットワークを形成し,免疫,炎症の場で機能する生理活性物質である.心筋病態において,これまでは心筋炎を除いて免疫学的機序が関与していることなどは予想されていなかった.しかしながら,近年循環器領域において,動脈硬化の発症・進展,虚血性心疾患,心筋症,さらには心不全の病態においても,さまざまなサイトカインが関与することが明らかにされている.特に,従来,免疫担当細胞から主に産生されていると考えられていたサイトカインが,血管平滑筋細胞,内皮細胞のみならず心筋細胞からも産生されていることが明らかにされたことは,サイトカインの心疾患へのかかわりをさらに深いものとした.また最近の研究により,サイトカインの役割が細胞の増殖や分化にかかわるだけでなく,アポトーシスと関連することが明らかにされ注目を浴びている.特にIL−6関連サイトカインにおいて,leukemia inhibitory factor(LIF)やcardiotrophin−1(CT−1)が,心筋細胞に対して保護因子として作用することが明らかにされている(JBiol Chem 272:5783,1997).その分子機構の一つとして,LIFがアポトーシス抑制遺伝子を心筋細胞において誘導すること(文献参照),CT−1がLPS処置マウスの心臓および血中におけるTNFの産生を抑制することなどが報告されている(Am J Pathol 149:1847,1996).
今後,サイトカインの作用機序の分子的基盤を解明することにより,心疾患の病態に新たな解釈が加えられることが期待される.循環器領域におけるサイトカイン研究は,本邦の研究者らにより先駆的な研究が多くなされており,はからずも今回の文献は“日本製”になってしまったが,ぜひ身近な気持ちで読んでいただきたい.
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