Topics Respiration & Circulation
接着分子と心筋障害
磯部 光章
1
1信州大学医学部第1内科
pp.627-628
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901506
- 有料閲覧
- 文献概要
■最近の動向 細胞間接着分子は,細胞の機能を左右する重要なシグナルを産生し,また細胞同士が直接に接触して行う情報の伝達にかかわっている.これまでの研究で,接着分子が様々な生命現象において重要な役割を果たしていることが示されてきた.そのことは接着分子の機能の一部を実験的に抑制すると,極めて大きな生物学的作用が引き起こされることから推測される.この領域のこれまでの進歩は,多様な接着分子の発見とその機能解析であった.接着分子は極めて錯綜した接着動態を示し,またその発現も動的に調節されていることが明らかにされつつある.その機能分担についてはなお不明なことが多いが,最近は炎症反応,T細胞の活性化などにおける各種接着分子の働きにっいての研究が進展してきた.基礎面での研究の中心は,接着分子を介したシグナル伝達機構の解析である.
心疾患においても様々な病態に接着分子が関与していることが示されている.治療への応用の可能性も含めて,今後の発展がおおいに期待されている.病態との関連が特に深いと考えられるのは,虚血再灌流障害,心拒絶反応,心筋炎などである.虚血再灌流障害は白血球の浸潤が関与しており,その点で接着分子が重要な役割を果たす.この点では,セレクチンファミリーの接着分子とシアリルルイスXなどの糖鎖の役割とその阻害効果に関する研究が多くなされている.また,急性心拒絶反応においてはT細胞が免疫反応の主役を果たすが,T細胞の持続的な活性化にCD 28が主役を演じていることが明らかにされてきた.現在は,これら接着分子の機能解析と臨床応用可能な薬剤の開発が精力的に研究されている.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.