Topics Respiration & Circulation
ケモカインの新展開
藤島 清太郎
1
1慶應義塾大学医学部救急部
pp.625-626
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901505
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■最近の動向 1988年のIL−8発見に始まり,この9年間に当初は予想もされなかった多数のケモカインが同定された.昨年のゴードン・カンファレンスでの発表内容はおおよそ以下の4つであった.①既知のケモカインに対する拮抗物質の開発と炎症性疾患治療への応用.②新たなケモカインの発見とその機能解明:好酸球特異的ケモカインEotaxinやMCP−4,そしてSDF−1など.③HIV感染との関係:HIVの共役受容体であることが判明したCCR 5, fusinおよびこれらリガンド,特に合成MIP−1αによるHIV感染抑制は治験段階にある.④C-X-Cケモカインと血管新生:N末端のELRモチーフの有無によりangiogenicとangiostaticなケモカインがある.Michigan大のStrieterらが中心となり,肺ガンとの関係を検討している.ただしVEGFに比し血管新生作用は弱いようである.
われわれは,以前よりIL−8を中心にケモカインの炎症性肺疾患病態との関係を検討し,ARDS,特発性肺線維症(IPF)急性増悪期,過敏性肺臓炎,慢性下気道感染症などとの関係を明らかにしてきた.現在,各種抗IL−8療法の炎症性疾患治療への応用が検索されており,抗IL−8抗体の開発が数社で行われている.われわれも再膨張性肺水腫モデルにおいてその有効性を確認した.また小分子ペプチドや,合成IL−8拮抗・産生抑制物質も検討されている.われわれは,抗ケモカイン療法が有効な治療がなく予後不良な炎症性肺疾患であるARDS,IPFなどに対する一つの有望な治療法と考えている.
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