Japanese
English
特集 NOと循環調節
NOと動脈硬化
Nitric Oxide and Atherosclerosis
平田 健一
1
,
横山 光宏
1
Kenichi Hirata
1
,
Mitsuhiro Yokoyama
1
1神戸大学医学部第一内科
1Department of Internal Medicine I, Kobe University School of Medicine
pp.127-132
発行日 1996年2月15日
Published Date 1996/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901192
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はじめに
近年,血管内皮細胞には多彩な生理作用が存在することが解明されてきたが,その中の代表的なものとして内皮由来血管弛緩因子(endothelium—derived relaxing factor;EDRF)を産生し,放出して血管トーヌスを調節していることがあげられる.EDRFの本体は一酸化窒素(NO)またはNO類似の化合物であり,NOはL—アルギニンを基質としてNO合成酵素(NOS)によって産生される1).内皮細胞から産生されるEDRF/NOは血管平滑筋を弛緩させるのみならず血小板の凝集や白血球の接着を抑制し,平滑筋の遊走,増殖を抑制するなど,多彩な機能を有している2).NOと動脈硬化の関連については,主として①動脈硬化血管におけるNO産生の異常のメカニズムとその意義,②動脈硬化の発症,進展におけるNOの役割の二つの点について研究が進められている.動脈硬化血管においてEDRF/NOによる血管弛緩反応が低下していることは虚血性心疾患の病態に重要な役割を果たしており,高脂血症を治療することで内皮細胞機能が改善し,虚血性心疾患の予後を改善する可能性が報告されている3〜5).
一方,動脈硬化の発症,進展におけるNOの役割についてはNOが平滑筋の増殖を抑制するなど,長期的効果として動脈硬化の進展や血管のリモデリングにも影響を与えている可能性が注目されている.したがって,これらの点を解明することが動脈硬化や虚血性心疾患などの成因や病態を理解し,治療法を考えるうえで有用である.本稿では,上記の2つの点について,現在までの報告を中心に概説する.
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