Japanese
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特集 酸化ストレスと心血管病態
動脈硬化病変形成における酸化的ストレスの重要性
The Significant Role of oxidative Stress in Atherogenesis
井上 信孝
1
,
横山 光宏
1
Nobutaka Inoue
1
,
Mitsuhiro Yokoyama
1
1神戸大学医学部第一内科
1First Department of Internal Medicine, Kobe University School of Medicine
pp.779-787
発行日 2000年8月15日
Published Date 2000/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404902137
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はじめに
ヒトをはじめとして地球上の好気性生物は,酸素を利用した酸化によるエネルギーを利用し生命現象を営んでおり,酸素は,言うまでもなく生命体が存在するうえで必須な分子である.しかし,感染症,炎症性疾患,動脈硬化ならびに虚血性疾患という病的状態では,酸素は還元過程で生じるスーパーオキサイド(O2—),過酸化水素(H2O2),ヒドロキシラジカル(OH—)などの活性酸素による細胞傷害の危険に曝されている.こうした生体への悪影響が強調され,酸化的ストレスと称されてきた.しかし,一方で近年,生体分子の酸化還元による化学的修飾が,その分子の活性を調節していることが明らかとなり,活性酸素が細胞内情報伝達に重要な役割を果たしていることが明らかとなった(この生体分子の酸化還元反応による制御をレドックス制御と呼ぶ.).
動脈硬化の発症進展は,multifactorialで種々の要因がinteractionしながら進展すると考えられている.血管内皮の傷害により始まり,傷害部位での血小板の凝集,付着,単球の接着,内皮下層への移動,マクロファージから泡沫細胞の形成,中膜平滑筋細胞の内膜への遊走,増殖により動脈硬化巣が形成される.こうした複雑な過程において,活性酸素による酸化的ストレスは,血管内皮の傷害による動脈硬化形成の開始から,その進展,さらに動脈硬化病巣の終末像ともいえる粥腫の破綻による血栓性閉塞に至るまでの各段階において重要な役割を果たしている.
本稿では,動脈硬化病巣形成過程における酸化的ストレスの役割,レドックス制御の意義について,われわれの最近の知見を交え概説する.
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