- 有料閲覧
- 文献概要
周知の通り,過去10数年間における,カテーテルによる冠動脈疾患治療coronary inter—ventional therapyの発展には著しいものがあり,短期間のうちにこの領域における有力な治療法としての地位を得るに至っている.
一方では,この治療法について多くの問題点も指摘され,これは臨床応用の拡大に伴い,一層増加する傾向すら窺える.例えば,最近よく指摘される点は,PTCA法をはじめとするカテーテル冠動脈形成法が,わが国では冠動脈バイパス手術の5〜10倍の頻度で施行され,欧米の略1:1の比率と大なる差があることで,本法適応に大きな偏りがあることが示唆されている.さらに,バルーンカテーテルをはじめとするdeviceは事実上全て外国製であり,供給国における価格の5倍以上もの保険価格が認められ,本法は必然的に高額治療法となっている.また,coronary inter—ventional therapyに関する発展が,大学病院より一般病院が主体となって推進されて来たことも挙げられる.大学の講座制の下では,新しい治療体系を導入するには,数多くの障壁を越えなければならないが,本法のように診療の実技に関わる点が大なる場合には,大学の必要とする“学問性”が認められ難いという問題も加わる.専門医制の形式化とも相まって,技術レベルにも各施設,各個人について大きな差があるのも現実である.しかしながら,これらの問題を落ち着いて考えてみると,coronary interventional therapyの問題として指摘され,われわれ現場の医師の意識にも,本法固有の問題点として認識されている事柄の多くが,実は本法とは直接関係のない,大学組織の問題,専門医研修制度,外科医の技術レベル,欧米の現状をgold standardとする体質,果ては流通システムの問題に至るまで,単に医療,医学の抱える問題を,鋭敏に反映しているに過ぎないことに思い至る.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.