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血栓溶解療法や経皮的冠動脈形成術(以下PTCA)による再疎通療法は梗塞サイズの縮小と院内死亡の減少をもたらし,急性心筋梗塞(以下AMI)の短期予後を著しく改善した1).一方,梗塞後狭心症(postinfarction angina,以下PIA),あるいはそれと同等の意義を有する無症候性心筋虚血(silent myocardial ischemia,以下SMI)などの心筋虚血の有無,左心不全,頻発性心室性不整脈が心筋梗塞発症後比較的早期の予後に影響を及ぼす因子として重要である.PIAやSMIなどの虚血のエピソードの反復は梗塞域の拡大や心筋の不可逆的悪化を招来し,再梗塞や突然死発生のリスクを高めると考えられる.更に,長期予後に影響を及ぼす因子としては,冠動脈多枝病変,広範な梗塞,心筋梗塞の既往,梗塞前後の狭心症や心筋虚血の存在,左心不全,重症心室性不整脈,2束ブロック,左脚ブロックのほか,心拡大,高齢,高血圧の合併などがあるが(表1),最も重要なのは左心機能と冠動脈病変枝数であるとされる2).
冠動脈病変の重症度では,部位,狭窄率,特に完全閉塞病変の有無,冠動脈病変枝数が重要であり,梗塞部位および梗塞範囲や左心機能,狭心症を含む心筋虚血や不整脈も冠動脈病変の重症度によって原則的には規定される.急性期を脱した心筋梗塞患者の生活指導や管理にあたっては,これらの諸因子を十分に評価しておくことが重要であり,その手段としては臨床症状のみならず,運動負荷試験,心臓超音波検査,ホルター心電図,運動負荷心筋シンチグラフィー,冠動脈造影を含む心臓カテーテル検査,RIアンギオグラフィーなどを施行し,個々の患者の病態を正確に把握することが肝要である(表2).
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