Japanese
English
特集 冠血管再狭窄と平滑筋増殖
ACE遺伝子の多型性と再狭窄
Angiotensin-converting Enzyme Gene Polymorphism and Restenosis after PTCA
楽木 宏実
1
,
荻原 俊男
1
Hiromi Rakugi
1
,
Toshio Ogihara
1
1大阪大学医学部第4内科
1Department of Medicine&Geriatrics, Osaka University Medical School
pp.245-250
発行日 1995年3月15日
Published Date 1995/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901018
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はじめに
アンジオテンシン変換酵素(ACE)は,アンジオテンシンIを基質として,強力な血管平滑筋収縮作用,水電解質調節作用を持つアンジオテンシンII(AII)を産生させる膜結合型の酵素として知られる.近年,AIIが血管平滑筋細胞増殖作用や肥大作用を持つことがin vitroやin vivoの実験系で示され,臨床的にも,ACE阻害薬が血管肥厚の退縮や心筋梗塞患者での再梗塞発症率を低下させることが報告された.また,ACE阻害薬はラットの頸動脈内皮傷害後の内膜増殖を抑制することから,AIIやACEがヒトの経皮的冠動脈形成術(PTCA)後の再狭窄に関与している可能性が示唆されている.
さらに近年,多因子疾患における原因遺伝子や遺伝的リスクファクターの探索が盛んに行われており,心筋梗塞や心筋症,高血圧といった心血管系疾患においては,候補遺伝子としてAII産生系に関与するレニン,アンジオテンシンノージェン,ACEなどの遺伝的変異との関連が検討されている.これらの検討に重要なのが遺伝子の多型性(genetic polymorphism)である.これには,CAリピートなどのマイクロサテライト多型,挿入・欠失多型や点突然変異などが検索の対象として用いられている.特に,1992年に報告されたACE遺伝子の挿入・欠失多型と心筋梗塞発症との関連は有名である1).
本稿では,このACE遺伝子多型と冠血管形成術後の再狭窄との関連について,ACEの再狭窄における病態生理的意義を含めて概説する.
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