Japanese
English
解説
本邦における心血管系疾患発症に関する最近の動向
Trend in Cardiovascular Morbidity in Japan
柊山 幸志郎
1
Koshiro Fukiyama
1
1琉球大学医学部第3内科
1Department of Internal Medicine III, Faculty of Medicine, University of the Ryukyus
pp.943-947
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900935
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はじめに
わが国の循環器疾患の死亡統計(人口調整死亡率)によると,脳血管疾患死は1970年代から急激に減少したが,心疾患死亡率は横ばい状態にあるか,やや低下しており,1985年以降には心疾患死が脳血管疾患死より多くなった1).この事実は,心疾患なかでも虚血性心疾患は増加しているが心筋梗塞より脳卒中のほうがまだ多い,などの臨床医の印象とやや異なるところであって,死亡率がそのまま発症率の傾向を示すと考えるわけにはいかない.
死亡統計は,わが国の循環器疾患の特徴を知る唯一の大規模な資料であるが,従来から指摘されてきたように,死亡診断書作成上の習慣に基づくバイアスがある.診断技術が進歩したとはいえ,資料は全国規模で集められる,すでに死亡していた場合(death on arrival)には心不全の診断とすることが多い,剖検によって確かめられた診断は極めて少ない,治療の進歩により急性期死亡が少なくなったために発症した循環器疾患がそのまま直接死因とはならない可能性がある,等々を考慮すると,死亡統計から現在の循環器疾患の発症状況を推定するには難がある.
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