Japanese
English
綜説
がん抑制遺伝子—肺癌を中心に
Tumor Suppressor Genes Involved in Lung Carcinogenesis
河野 隆志
1
,
横田 淳
1
Takashi Kohno
1
,
Jun Yokota
1
1国立がんセンター研究所生物学部
1Department of Biology, National Cancer Center Research Institute
pp.935-942
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900934
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がん抑制遺伝子とは1,2)
がん抑制遺伝子とは,その遺伝子が不活化されることによって,細胞をがん化に導く遺伝子の総称であり,遺伝子が活性化することによって,がん化に導くがん遺伝子と対照的に名付けられている.がん遺伝子のコードする蛋白質は細胞の増殖を進める方向,がん抑制遺伝子のコードする蛋白質は細胞の増殖を抑制する方向に作用し,それらはしばしば,車のアクセルとブレーキに例えられる.つまり,正常細胞では,アクセル,ブレーキの両者が状況に応じて巧みに制御されることにより,車の走行(細胞の増殖)は安全に保たれているが,アクセルが入りっぱなしになっても(がん遺伝子の活性化),ブレーキが効かなくなっても(がん抑制遺伝子の不活化),車は暴走状態(がん細胞)になってしまうということである.
ヒトの細胞は父親由来,母親由来合わせて2本の相同染色体を持つ2倍体細胞であるため,がん抑制遺伝子も細胞内に2コピー存在する.そのため,ある細胞のがん抑制遺伝子が完全に不活化されるためには,2つ存在する対立遺伝子(アレル)の両方が不活化されることが必要である.そのため,1つのがん抑制遺伝子が不活化される過程では2段階の遺伝子変化が生じていると考えられている(Knudsonのtwo-hit-theory).
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