巻頭言
植込み型除細動器のわが国における将来性
田中 茂夫
1
1日本医科大学胸部外科
pp.105
発行日 1994年2月15日
Published Date 1994/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900807
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近年,成人病の増加,社会におけるストレスの増大などに伴い,過労死,突然死の問題が注目されるようになった.突然死とは“発症から24時間以内の予期しない内因性死亡”と一応定義されている.内因性とは自殺,殺人,事故死など外部から加えられた死因によるものは除外するという意味である.突然死の大部分は何らかの心疾患に由来する,いわゆる心臓病死であり,多くは心室頻拍(VT),心室細動(VF)などの致死性不整脈による.
これらの致死性不整脈に対する治療法として,最近,植込み型除細動器(Implantable Cardio-verter Defibrillator,ICD)による治療法が注目されるようになった.心室頻拍,心室細動が発生すると,体内に植込まれた本装置が自動的に不整脈を感知し,心室頻拍にたいしては抗頻拍ペーシングあるいはカルディオ・バージョンを,心室細動に対しては除細動を行うという治療法である.臨床例の第1例は1980年に米国で行われているので,すでに10年以上の臨床経験を有するが,装置の小型化,機能の改善により,近年著しく臨床例が増加し,1992年には欧米を中心に2万例以上の植込み臨床倒が報告されており,今後症例数はさらに増加するものと予想されている.わが国では1990年から臨床治験が開始され,すでに61例の植込み術が行われ,広く臨床使用されるのも近いものと予想される.
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