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特集 血管内皮細胞からみた循環器疾患の新しい展開
血管内皮細胞由来の血管収縮・弛緩因子
Endothelium-Derived Contracting and Relaxing Factors
木村 定雄
1
Sadao Kimura
1
1千葉大学医学部附属高次機能制御研究センター高次神経分野
1Devision of Functional Neurobiology, Center for Neurobiology and Molecular Immunology, School of Medicine, Chiba University
pp.1043-1049
発行日 1992年11月15日
Published Date 1992/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900565
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はじめに
血管内皮細胞は血液と血管平滑筋の間の単なる隔壁ではなく,現在では多様な機能をもつことが知られている.血液の流動性の調節(血液凝固および線溶活性,血小板機能の調節),物質透過性の制御,平滑筋収縮弛緩の調節,平滑筋増殖作用などである.また,内皮細胞は様々な物質の合成および代謝能力を持っており,とくに血管の緊張性の調節に関しては,種々の物理的あるいは化学的刺激に応じて収縮因子や弛緩因子を分泌する.これらの血管収縮・弛緩因子は単一のものではなく,刺激の種類に応じて異なる因子が産生・分泌されると考えられる.これらの収縮および弛緩因子のバランスの破綻が循環不全などの病態を引き起こすと考えられる.これらの因子としては,ニトロソ化合物,プロスタノイド,フリーラジカル,ペプチドなどが含まれている.
1980年,Furchgottらは単離した血管に対してアセチルコリンを投与したときに生ずる弛緩反応を詳細に解析し,血管弛緩因子が血管内皮細胞から放出されていることを発見した1).この内皮細胞由来弛緩因子は1976年に発見されたプロスタサイクリン(PGI2)とは異なるものであり,EDRF(endothelium-derived relaxing factor)と名付けられ,1987年その本体は一酸化窒素(NO)であることが示されている2).
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