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特集 血管内皮細胞からみた循環器疾患の新しい展開
血管内皮細胞の抗血栓作用
Antithrombogenic Properties of Endothelial Cells
松尾 理
1
Osamu Matsuo
1
1近畿大学医学部第2生理学
1Department of Physiology Ⅱ, Kinki University School of Medicine
pp.1051-1058
発行日 1992年11月15日
Published Date 1992/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900566
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はじめに
止血機構は血液の血小板系,凝固系,線溶系および血管壁の反応からなっており,生体の中での調節機構の中で最も巧妙に進化してきた1).血液は脈管系の中では凝固せず滑らかな流動性を保持し,一度血管外へ出ると速やかに凝固する性質を有する.生体に「出血」あるいはその逆の状態の「血栓」という非常事態に際して防御的に働き,生体の内部環境を正常な状態に維持させるように機能する(図1).その結果,生理的な条件下では出血も血栓も起こらず,homeostasisが維持される.
血液の血小板系,凝固系および線溶系は何れも活性化系と阻害系とから成り,そのバランスによって機能亢進あるいは機能低下になり,出血あるいは血栓という病的状態がもたらされる(表1).すなわち,血液血小板系および凝固系では活性化系の機能亢進で血栓,機能低下で出血,逆に阻害系の機能亢進で出血,機能低下で血栓が生じる.血液線溶系の場合はこれとは逆で,活性化系の機能亢進で出血,機能低下で血栓,阻害系の機能亢進で血栓,機能低下で出血が生じる.生理的な場合には何れの亢も機能亢進と機能低下の間での正常範囲内にある.これを換言すると,抗血栓性と抗出血性の間に調節されているということになる.抗血栓性は血栓形成を阻害するという抗血栓性(antith-rombogenic)と血栓形成を惹起させる向血栓性(prothrombogenic)のバランスによっているともいえる.
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