Japanese
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総説
内皮細胞由来血管収縮ペプチド『エンドセリン』研究の展開と展望
Recent Progress in Endothelin Research
吉澤 利弘
1
,
金澤 一郎
1
,
眞崎 知生
2
Toshihiro Yoshizawa
1
,
Ichiro Kanazawa
1
,
Tomoh Masaki
2
1筑波大学臨床医学系神経内科
2筑波大学基礎医学系薬理
1Department of Neurology, Institute of Clinical Medicine, University of Tsukuba
2Department of Pharmacology, Institute of Basic Medical Sciences, University of Tsukuba
pp.1165-1173
発行日 1989年12月1日
Published Date 1989/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406206435
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I.はじめに
エンドセリンは1988年に柳沢,木村,眞崎らによってブタ大動脈内皮細胞の培養上清中から強力な血管収縮活性を指標として単離,構造決定された21アミノ酸残基からなるペプチドである52)。ちょうどその前年にあたる1987年にはPalmer, Moncadaらによって,長年にわたり明らかではなかった内皮細胞由来血管弛緩因子(endothelium-derived relaxation factor, EDRF)の本体が一酸化窒素(NO)ではないかという報告がなされ議論をよんでいた矢先でもあり32),この新しい内皮細胞由来血管収縮ペプチド発見の報告は全世界に研究の嵐を引き起こした。特に血管に対する生理活性は極めて低濃度から発揮され,効果の持続も数時間という長さにわたるという際立った特徴から52),本態性高血圧や血管攣縮の発症メカニズムと関連して大きな関心をよび,わずか一年半という短期間にもかかわらず多くの知見が集積されてきた。その過程でエンドセリン研究の方向は多方面に展開され,現在ではこのペプチドが血管内皮細胞系に限らず,より普遍的な生理活性ペプチドとして機能しているものと考えられつつある。本総説ではこれまでのエンドセリン研究の結果を踏まえながら,現在新たにどのような方向で研究が展開されているかを概観し,あわせて神経系におけるエンドセリン研究にスポットをあてて紹介したい。なお,エンドセリンの単離構造決定までの経違については既に詳細な総説が発表されているのでそれらを参考にされたい53)。
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