巻頭言
P-Vとγ-A
堀江 孝至
1
1日本大学医学部第一内科
pp.1173
発行日 1991年12月15日
Published Date 1991/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900385
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von Neergaard(1929)は,肺をair,およびisotonic solutionでふくらませた時,呼気時の肺圧量(PV)曲線上に記録される肺弾性圧は異なり,liquid fillingの時の圧が著しく低いことを発見した.この圧の差は肺胞気と肺組織の界面に生ずる表面張力のためであるとし,すべての肺気量位において肺弾性圧に対して組織張力よりも表面張力の方が重要な役割をしていると報告した.肺表面張力が一定であるという誤った仮定を立ててはいるが,肺胞表面に生じる界面張力に言及し,その重要性を指摘した最初の報告である.しかし,この重要な発見はその後四半世紀のあいだかえりみられることはなく,1950年代になってRadfordが再認識し,Clements,Pattleらが肺表面張力を再発見するまで看過されていた.Clementsは,Lang-muir-Wilhelmy surface balanceを用いて,肺からの抽出液中に表面積の変化に伴って表面張力を変化させることのできる物質が存在することを直接示し,まもなく肺表面活性物質の主成分がDipalmitoyl phos-phatidylcholine(DPPC)であることも証明された.その後,肺表面活性物質に関する,組織学的,生化学的な研究が著しい進展をしていくことになる.
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