増刊号 免疫検査実践マニュアル
各論
Ⅱ.腫瘍マーカー
6.PAP,PSA,γ-Sm
野垣 譲二
1
,
蜂矢 隆彦
1
,
岡田 清己
1
1日本大学医学部泌尿器科学教室
pp.168-170
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901926
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
■各腫瘍マーカーの概説
1.PAP
酸性ホスファターゼ(acid phosphatase;ACP)は分子量約10万の糖蛋白である.また酸性のpH下でリン酸エステルを加水分解する酵素であり,前立腺には多量のACPが存在している1).1938年Gutmanら2)によって転移を有する前立腺癌患者で血中ACPが高値を示すことが報告されて以来,最も古くから知られ,利用されている前立腺腫瘍マーカーである.しかし,この総ACPは非特異的であるため,その後,前立腺由来の酸性ホズファターゼ(prostatic acid phosphatase;PAP)のみを測定するために各種基質と阻害剤による酵素法的測定法(enzymatic assay;EA)の改良がなされたが,進行性前立腺癌の診断と病状のモニターとしての価値はあっても感受性,特異性が低く,早期前立腺癌の診断には満足できるものではなかった.Schulmannら3)によってPAPに対する抗血清が作製されて以後,免疫学的測定法(immunoassay;IA)が開発された.前立腺癌組織や前立腺分泌液,精漿などを用いてPAPを精製し,これを抗原として抗PAP抗体を作製.この抗PAP抗体による抗原抗体反応によって蛋白を測定し,PAP値を求める方法である.このIAには放射性同位元素を利用したRIAとEIAがある.
Copyright © 1994, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.