Japanese
English
綜説
自己骨格筋による循環補助
Cardiac Assist Using Autologous Skeletal Muscle
新浪 博
1
,
川合 明彦
1
,
山崎 健二
1
,
小柳 仁
1
Hiroshi Niinami
1
,
Akihiko Kawai
1
,
Kenji Yamazaki
1
,
Hitoshi Koyanagi
1
,
Larry W Stephenson
2
1東京女子医科大学附属日本心臓血圧研究所循環器外科
2The Department of Surgery, Division of Cardiothoracic Surgery, Wayne State University, School of Medicine
1The Department of Cardiovascular Surgery, The Heart Institute of Japan, Tokyo Women's Medical College
pp.1174-1180
発行日 1991年12月15日
Published Date 1991/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900386
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はじめに
近年重症心不全症例に対する新しい治療法として自己骨格筋を用いた循環補助が実験的臨床的に試みられ,新しい心臓外科領域として注目されている.歴史的には50年以上も前に骨格筋を心筋の一部として代用するという試みが臨床的に行われていた1).しかしこの当時はまだペースメーカー開発以前であったため,骨格筋グラフトは心臓外傷や心室瘤による欠損部の補填として用いられていた.その後1959年にKantrowitzら2))が骨格筋に電気刺激を与えることによりその収縮力を心機能補助に応用するという試みを実験的に行った.しかしながらその最大の問題点は骨格筋疲労をいかにして克服するかということであった.ところが最近になって骨格筋による循環補助が再び注目されるようになったのは,この最大の問題点である筋肉疲労をある一定の慢性電気刺激を与えることにより,心筋のように疲労しにくい筋肉に変換することに成功したからである3-5).
心臓移植や人工心臓の発達にもかかわらず,末期心不全患者に対する治療はまだまだ問題を残している.それらの治療法に比較すると自己骨格筋を利用することはいくつかの利点があげられる.自己骨格筋には,免疫反応を引き起こす心配がない.またdonorや体外の動力源も必要としない.さらには骨格筋には成長する潜在能力があり,複雑先天性心奇形の治療に対する可能性も秘めている.
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