巻頭言
代用弁置換医療
江口 昭治
1
1新潟大学医学部第2外科
pp.733
発行日 1991年8月15日
Published Date 1991/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900322
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代用弁の開発,改良により弁膜症の外科療法は一代発展を遂げた.代用弁の臨床応用の歴史は30年に及んでいる.昨年の9月,第28回日本人工臓器学会を新潟で開催したが,その際,人工臓器とQuality of life(以下QOL)と題して主として代用弁について大会長講演を行った.教室における代用弁の歴史は恩師の浅野献一先生(現在JR東京総合病院長)の第1例に始まる.新潟大学医学部に外科学第2講座が新設され1965年(昭和40年)4月に東京大学より先生が御着任になり,同年9月にはStarr-Edwardsボール弁による僧帽弁置換術が行われた.この第1例は術後25年の現在元気に自営業を営んでいる.教室における代用弁の歴史は4半世紀に及ぶことになる.初期では心不全の苦痛を取り除き延命をはかるのが第1目的であったが,やがて社会復帰も十分し得るということが判り,昭和48年には日本胸部外科学会では「弁置換後の社会復帰」がシンポジウムとして取り上げられた.弁置換術の手術直接成績が向上し,手術死亡率は重症例の増加にも関わらず数%となり,さらに25年に及ぶ長期遠隔成績が出ている現在,その医療の質は重要である.
代用弁置換術後のQOLを考えるとき医学的課題,社会的課題,心理的側面などに分けて考える必要がある.医学的課題として血栓塞栓症を始め種々の問題があるが,まず遠隔期生命予後を最初考えなければならない.
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