巻頭言
出発点
門田 康正
1
1徳島大学医学部第二外科
pp.103
発行日 1991年2月15日
Published Date 1991/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900215
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肺癌に対する一側肺全摘出(肺摘除)は日常行われている手術である.肺摘除に際して横隔神経を温存することは肺機能的に価値のあることであろうか.このような命題が与えられたときには神経切断患者と神経温存患者の呼吸機能の差異を検討すれば結論が得られるはずである.
肺摘除後数カ月経過すると患側胸郭は縮小し,横隔膜の挙上,縦隔の偏位,健側肺の過膨張がみられる.患者は患側胸部の圧迫感を訴える.患側横隔膜の呼吸性移動は見られない.このような状態は横隔神経を温存しても切断してもほとんど同じように見られる.神経切断群と温存群で肺機能的にもほとんど差異がない.したがって,肺摘除に際して横隔神経を温存する意義がないように一見みえる.
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