連載 整形外科philosophy・9
疼痛ケアの出発点と新世紀
辻 陽雄
1
1富山医科薬科大学医学部
pp.1399-1401
発行日 1997年12月25日
Published Date 1997/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408902322
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
痛みは人間の生存にとって大切な知覚であり,体を守る一つの警告信号と解釈されている.ところが逆に,痛みはときとして人を苦しめる.痛みは人類の宿命的で最大の苦痛でもある.約1,700年ごろDryden J.は次のように言っている.「人の得る幸せとは楽しみの中にあるのではなく,痛みのない安らぎの中にある」と.
すでに哲学者Aristotelés(BC384-322)は痛みというものは情緒であると解釈した.ところが,Descartes(1596-1650)は痛みは情緒ではなく,知覚であると結論したのである.確かに痛覚の刺激を専門的に伝達する神経線維,すなわちA-δおよびC線維の存在が後に明らかにされているから,痛みは知覚であることは真理であるが,私達が痛みを認知するのはあくまで大脳においてであるから,痛みは情動として捉えるべきと私も思う.気の持ちようで痛みの強さや感じ方も変わるのも現実である.
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.