Japanese
English
特集 肥満と呼吸
肥満とはなにか
Respiratory implication of obesity
金野 公郎
1
,
山口 美沙子
1
Kimio Konno
1
,
Misako Yamaguchi
1
1東京女子医科大学第一内科
1The 1st Department of Internal Medicine, Tokyo Women's Medical College
pp.399-401
発行日 1990年5月15日
Published Date 1990/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900133
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はじめに
人間は平均して一生に約30トンの食物を食べるという。そのうち25歳から65歳までの40年間に約20トンの食物を食べ,その間女性は約11kg体重が増えるという。昨今は「肥満児」なるものをよくみかけるが,著者らの学童時代には「肥満児」なぞ夢のまた夢であった。しかし考えてみると肥満もかつての人類の生存にとって必要な適応能力の1つではなかっただろうか?われわれには過剰な栄養素を処理する方法として限られた機能しかない。過剰なナトリウム,ビタミンC,その他の水溶性の栄養素は尿から排泄され,一方過剰なカルシウム,鉄などは吸収されなくなる。ところがエネルギー源としての炭水化物・アルコールや脂肪は吸収され続け,過剰分は循環系から除外され,脂肪として貯蔵される1)。昨今のような飽食時代ではこのような機能はそのまま肥満形成へとつながるが,しかしかつての欠食児童期(あるいは食糧の供給が不安定な時期)には生体の機能維持にとって必要欠くべからざる適応能力といえよう。一方,呼吸は生命維持に最も重要なガス交換を機能としている。昨今は大気中のCO2濃度の増加に伴う温暖化が環境問題としてクローズアップされているが,しかし人間の生存に必要とする大気中のO2供給源の安定度は高く,したがって体内に過剰のO2を貯蔵する必要性はまったくない。この点肥満と呼吸との接点はない。肥満と呼吸とで抱く一般的なイメージは“呼吸があらい”ということで,その根底にはmass loadingがある。肥満と呼吸の関わりは各論において詳細に述べられるので本稿では肥満に関しての最近の考え方を概説し,この観点から新たな呼吸器と肥満について考えてみたい。
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