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概念
不整脈源性右室異形成(arrhythmogenic right ventricuiar dysplasia:ARVD)は臨床的には,右心室に起源を有する左脚ブロック型の持続性心室頻拍(ven-tricular tachycardia:VT)や心室性期外収縮(VPC)などの心室性不整脈を主症状とし,病理組織学的には,主に右室自由壁の心筋の脱落と脂肪組織(adipose tissue)と線維組織(fibrous tissue)の増加を示す,臨床的および病理学的症候群であり,1978年FrankおよびFontaineらにより命名された1)。病理学的異常を反映して臨床的には,心臓超音波検査,核医学検査,心臓カテーテル検査などにより右室の拡大や壁運動異常などの形態学的異常が観察され,また右室起源の心室性不整脈以外に心電図上のT波異常やε波(epsilon wave),右室マッピングによる局所の遅延電位(delayed potential)などの電気生理学的異常がみられる。ARVDでは病変は主に右心室に限局し,左心室はその形態,機能ともに保たれることが多いが,時に左心室に病変を有することもある2)。ARVDの主症状は,不整脈に基づくものであり,右心不全を伴うことは少ない。
一方,類縁疾患としてUhl(ウール)病3,4)があるが,Uhl病は右室筋のほとんどすべてが欠如する先天性の心奇形として位置づけられている。Uhl病は右室壁が紙のように薄くなり(paper like),別名“perchment heart”(羊皮紙様心)ともよばれている。ARVDよりも若年者でみられ,時にVTを合併することがあるが,主な臨床徴候は右心不全である。Uhl病の右室自由壁はARVDと異なり脂肪組織は少なくほとんどが線維組織で占められている。Uhl病がARVDの極型なのか他の疾患群に属するものかは現在のところ明らかではなく,臨床的に成人型Uhl病と右室全体に病変の進行したARVDを区別することは困難である。
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