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はじめに
不整脈源性右室心筋症(arrythmogenic rightventricular cardiomyopathy;ARVC)は,病理組織学的に,右室優位の心筋細胞の変性・脱落と線維脂肪組織(fibrofatty tissue)の増加が認められる疾患である.この病変により,右心室の壁運動異常や右室に起源を有する左脚ブロック型の持続性心室頻拍(VT)や心室性期外収縮(PVC)を来すことが臨床的特徴である.
この疾患概念は1977年Fontaineらによって命名された.彼らは,薬剤抵抗性リエントリー性VTに対し手術治療を行い,右室の収縮異常と病理組織所見上の脂肪増加を認めた6例を報告した1).その後症例の増加とともに,1995年にはWHO/ISFCの心筋症分類2)においてARVCは心筋症の一型と認識されるようになった.診断名に関しては,当初不整脈源性右室異形成(dyspla—sia)が用いられたが,現在ではWHO/ISFCの心筋症分類に従い,不整脈源性右室心筋症(cardio—myopathy)の用語が用いられるようになった.
右室の機能と形態,病理組織,心電図,電気生理学,家族性の有無に基づき,1994年に作成されたESC/ISFCの診断基準3)に従えば,典型例での診断は容易である(表1).しかし,特発性右室流出路起源心室頻拍とARVCの初期像(con—cealed ARVC)4)との鑑別や,左室に病変が及んだ場合の特発性拡張型心筋症との鑑別診断には困難を感じる症例も存在する.治療は,主に心室頻拍の管理,突然死の予防である。近年,薬物療法の進歩に加え,植込み型除細動器,カリーテル焼灼術などの併用により,QOLや予後の改善が期待される.
病因はいまだ不明であり,単一の疾患ではないと考えられるが,遺伝子学的解析が進み,プラコグロビン(γ—カテニン)[ Plakoglobin(γ—catenin)],デスモプラキン(Desmoplakin)などの細胞間接着に関与する分子の異常が指摘されている.
本稿では,ARVCの臨床像,病理組織学的所見,病因に関する近年のトピックを含め述べる.また,最近優れた総説5)が掲載されたので,そちらも併せ一読されることをお勧めする.
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