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近年,臨床不整脈の診断,治療は著しく進歩した1)が,その中で"基礎心疾患のない"不整脈の臨床的意義が注目されている。その理由としてホルター心電図2)の普及と検診システムの充実および健康教育の向上などがあげられる。不整脈は一過性,突発的に出現するため,従来の10〜100拍の心電図記録では不整脈を検出することは困難である。しかしホルター心電図では24時間すなわち約100,000拍の連続記録であるため,その検出率は飛躍的に高まる。また従来は外来受診時あるいは入院時心電図記録であったが,日常生活における記録が可能となり,種々の内的,外的環境下での不整脈が検出される。さらに学校検診や成人病検診が充実したことおよび健康教育により健康人の不整脈の認識が高まったことによって,心電図やホルター心電図を記録する機会が増大したと考えられる。その結果,健康人においても不整脈が高頻度にみられ,かつその種類も多岐にわたることが明らかにされている。不整脈発作が,心拍出量の低下を来たし脳血流低下ないし途絶による脳虚血症状(失神発作,眩量発作)を惹起することはAdams-Stokes症候群3)として古くから知られている。そしてその極限の状態が心臓急死と考えられる。したがって不整脈の重症度評価4)において最も重要なのは心臓急死を来たしうるか否かにある。一般に基礎心疾患を有する不整脈ではその基礎心疾患の重症度が高いほど不整脈の重症度は高く,心臓急死の頻度も高い。一方,基礎心疾患のない不整脈は—般に予後は良好とされているが,心臓急死を来たし得ないか否かは必ずしも明らかではない。Adams-Stokes発作と心臓急死の関係は十分解明されていないが,臨床的にはAdams-Stokes発作の有無から心臓急死を予測しているのが現状である。したがって,Adams-Stokes発作を有しない場合に治療を要するか否か,特に心室性不整脈に対する抗不整脈剤の適応や運動制限に関して一定の見解は得られていない。今後ホルター心電図などによって得られた不整脈の長期追跡調査の蓄積により自然歴が明らかにされていくものと考えられる。
本稿では基礎心疾患のない不整脈の定義,不整脈の種類(とくに無症候性)および各不整脈の重症度(とくにAdams-Stokes発作・心臓急死との関連)について概説を加える。
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