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1997年度アメリカ胸部疾患学会(ALA/ATS)国際カンファレンスが5月16日から21日までの6日間,カリフォルニア州サンフランシスコにおいて催された.本学会の参加人数は年々増加し,今年は世界66カ国より約14,000人が参加した.本学会は呼吸器系に関する臨床研究,基礎研究および公衆衛生などにおける最新の知見,進歩を取り扱う質,量ともに世界最大の学会であり,今後の呼吸器学の動向を実際に肌で感じることができる貴重な学会でもある.各呼吸器疾患,救急医療,環境衛生などあらゆる呼吸器分野を網羅し,その対象は医師,看護婦,パラメディカル,ボランティアなどと幅広い.今年度は約5,700題の演題が発表され,至る所で活発な議論が交わされた.時間的制約のため自分の興味ある分野だけでもその総てに接するのは不可能であり,以下,私が参加したセッションを中心に述べる.
今年度のカンファレンスでは喘息に関する報告が多く目立った.アメリカにおいても喘息の有病率が年々増加して6%に達したこと,および抗アレルギー薬が喘息の治療に導入されたことを契機として,喘息に関するNIHガイドラインの見直しの必要性が検討された.また室内アレルゲンとして新たにゴキブリ(!)が指摘され,ニューズウイーク誌でも報道された.Sar—pongら(シカゴ)は小児喘息患者ではゴキブリに対する皮内反応陽性率が平均50%であり,特に気温の低い12月〜4月生まれの小児で65%と高いことが報告された.Homa Ahmadら(カナダ)はRT-PCRを用いて生後2週間の新生児のウイルス,とくにライノウイルスやパラインフルエンザウイルス感染の有無が咳嗽,喘鳴などの喘息症状の有無と相関することを示し,新生児期のウイルス(asthma-associated vir—uses)感染が小児喘息の発症に関与することを述べた.Cecilie Svanesら(ノルウェー)は出生時の体重と若年性COPD発症率が特に女性において逆相関することを示し,出生時の低体重児では若年性COPD発症率が高いことを報告した.肺線維症の治療についてアメリカでは線維化抑制剤Pirfenidone(DESKAR R)の第II相臨床治験が進行中であり,その有効性が報告された.本剤の作用機序としてprocollagenおよびTGF—βを介してコラーゲン産生を抑制することも報告された.Raffinら(スタンフォード大)によりLymphan—gioleiomyomatosis(LAM)に関するシンポジウムが行われた.LAMの原因として気道平滑筋のエストロゲン異常が考えられている.従来,LAMの診断は困難であったが今回,診断法としてHMB−45モノクローナル抗体の有用性が報告された.
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