Japanese
English
特集 肺動脈血栓塞栓症の基礎と臨床
肺動脈血栓塞栓症の診断
Diagnosis of Pulmonary Thromboembolism
藤岡 博文
1
,
矢津 卓宏
1
,
中野 赳
1
Hirofumi Fujioka
1
,
Takahiro Yazu
1
,
Takeshi Nakano
1
1三重大学医学部第1内科
1Department of Internal Medicine I, Faculty of Medicine, Mie University
pp.343-348
発行日 1997年4月15日
Published Date 1997/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900024
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はじめに
肺動脈血栓塞栓症(以下PTE)は急性PTE(以下APTE)と慢性PTEに分類される.慢性PTEはその定義に統一見解はないが,通常は「thrombo—embolic pulmonary hypertension」の概念で理解されている.その診断は肺高血圧症の診断と,肺高血圧症の原因疾患たるCOPDなどの肺実質性疾患,左心不全,veno-occulusive diseaseなどの前毛細血管性のものを除外すること,更に肺血管床内の血栓の証明により成し遂げられる.血栓の画像診断は基本的にはAPTEと同様である.そこで本稿では診断がより困難で早期の診断治療を求められるAPTEの診断について解説する.
APTEの問題点は,約30年間にわたる臨床研究にもかかわらずunderdiagnosisと依然改善されない死亡率にある.死亡率は確定診断され,適切な治療が行われたものでは8%,診断未確定例では32%といわれており1),改善されない死亡率もunderdiagnosisに起因するところが大である.underdiagnosisの実情はPTEと剖検診断されたものの生前診断率で評価しているが,最近の最も高い生前診断率ですら34%にとどまる2).この原因は肺血管床を閉塞した血栓の大きさ,閉塞部位,肺梗塞の有無,心肺疾患などの基礎疾患の有無による非特異的臨床病像によるものである.
したがって,ここでは診断により直結する臨床病像のまとめと,150余例の経験より重症度に応じた診断手順について述べる.
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