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特集 肺動脈血栓塞栓症の基礎と臨床
肺動脈血栓塞栓症の血栓性素因
Thrombophilia and Pulmonary Embolism
森木 隆典
1
,
池田 康夫
1
Takanori Moriki
1
,
Yasuo Ikeda
1
1慶應義塾大学医学部内科
1Department of Internal Medicine, School of Medicine, Keio University
pp.339-342
発行日 1997年4月15日
Published Date 1997/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900023
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はじめに
肺血栓塞栓症(PE)の血栓源の約90%以上を占めるのは,下肢および骨盤内の深部静脈血栓症(DVT:Deep Vein Thrombosis)であり,このDVT形成に関する素因を有するか否かを検証することは,診断,治療,ひいては再発の予防という観点から極めて重要であると考えられる.
血管が損傷を受け出血が起こると,その傷害部をふさぎ,出血を止めるために止血血栓が形成される。この止血血栓形成機構は極めて精密に制御されており,血管壁に何の傷害もないときは血液は決して凝固することなく血管内を流れている.いったん傷害が起こると血栓止血反応がスイッチオンされ,そのようにして開始された血栓形成は,決して行きすぎることなく,適度な大きさの血栓を形成し終了する,この制御機構は,血小板系,凝固線溶系,内皮細胞系などがさまざまなバランスをとって関与していると考えられるが,このバランスの障害により,止血血栓が過度に進行すれば血栓性疾患が惹起されることになる.血栓性素因とは,先天的に,もしくはなんらかの基礎疾患により後天的にこのバランス状態の破綻を来すような原因があり,その結果,容易に血栓形成が起こりやすくなっている状態を示している.
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