今月の主題 血流障害と血栓・塞栓症
診断
肺塞栓症の診断
中野 赳
1
,
藤岡 博文
1
,
竹沢 英郎
1
1三重大学医学部・第1内科
pp.2038-2041
発行日 1986年12月10日
Published Date 1986/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220632
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
肺塞栓症は急性肺塞栓症と,それを繰り返し高度の肺高血圧を呈する慢性反復性肺塞栓症に大別される.後者は本疾患の終末像で主病像は肺高血圧症であり,急性のものとは本質的に異なった病像を呈する.本邦では欧米に比して慢性反復性肺塞栓症の頻度が高く,これは急性肺塞栓症に対する診断・治療のたち遅れを示すものと考えられる.そこで本稿では主に急性肺塞栓症(以降肺塞栓症と略す)について述べる.
肺塞栓症の発症数に関しては,米国では年間16万例が確定診断を受けており,実際にはその4倍にあたる65万人が発症していると推定されている.それに比して本邦での報告は極端に少ない.しかし,筆者らが数年前に行った連続剖検例の病理学的検討で欧米と大差ない肺塞栓症を認めたことより1),先に述べた臨床例の差は医師の本症に対する関心,認識の差に起因していたものと考えられる.近年,本邦でも肺塞栓症に対する関心が高まりつつあり,近い将来循環器救急疾患として,また重篤な基礎疾患に合併して死因に直結する疾患として注目されるものと思われる.
Copyright © 1986, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.