Topics Respiration & Circulation
Na+/Ca2+,Na+/H+交換系
谷 正人
1
1慶應義塾大学医学部老年科
pp.887-888
発行日 1996年8月15日
Published Date 1996/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900019
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■最近の動向 心筋がある時間の虚血に晒された後に再灌流されても,心機能・心筋代謝の回復は十分には得られず心筋壊死を来す.このような心筋虚血再灌流傷害の重要な機序の1つとして,虚血中に心筋細胞内に蓄積したH+と細胞外Na+の交換による細胞内Na+の増加が重要視されている.増加した細胞内Na+は虚血中のforward mode Na+/Ca2+交換の抑制と二次的なsarcoplasmicreticulumからのCa2+.放出を来し,再灌流時にはreverse modeの同交換の活性化によりCa2+over—loadをもたらし,細胞傷害が生じると考えられる.しかし,Na+/Ca2+交換が正常心筋で電気活動や収縮・弛緩調節に重要な役割を果していることを考えると同交換の直接抑制は危険であろう.
一方,摘出灌流心を用いた実験では虚血中のH+蓄積を軽減する試み,薬剤によるNa+/H+交換の抑制などが行われ,その有効性が報告されている.細胞内pH調節には多くの機序があり,Na+/H+交換抑制剤を生体に投与しても危険性が少ないかもしれない.Na+/H+交換抑制剤は虚血性心疾患患者への予防投与や再疎通療法・開心術・心移植における心筋保護への臨床的応用が考えられる.
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