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はじめに
家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia;FH)はLDLレセプターおよびその関連遺伝子の変異によって発症する常染色体優性遺伝性の重篤な高脂血症であり,高コレステロール血症,高LDL血症,アキレス腱などの腱黄色腫,若年性冠動脈硬化症などを臨床的特徴とする.GoldsteinとBrownらの精力的な研究によって,原発性高コレステロール血症のなかでは最も病態と病因が明確にされた疾患である.FHの本態はLDL受容体の異常により,全身の細胞,特に肝臓でLDLが細胞内に取り込まれず,LDLの異化障害が起こるために血中にLDLがうっ滞する.最近,LDL受容体の遺伝子変異のほかに,LDL受容体の分解に関わるproprotein convertase subtilisin/kexin type 9(PCSK9)の機能獲得型変異や,アポ蛋白B100遺伝子のミスセンス変異によるfamilial defective apo B100なども発見され,これらもFHのなかに分類される.筆者らの原発性高脂血症調査研究班の全国調査では,FHホモ接合体の血清LDLコレステロール(LDL-C)値は平均582±132mg/dl(mean±SD),FHヘテロ接合体では248±67mg/dlであった1).
成人FHヘテロ接合体は一般人口の500人に1人と言われていたが,最近では200〜400人に1人と頻度が高く,早発性冠動脈疾患の頻度が高い.男性では30歳台から高頻度となり,60歳台では約80%が冠動脈硬化を有すると考えてよい.女性ではその発症は約10〜15年遅れると考えられる.FHの治療の目的はLDL-C値を低下させることにより,高頻度に発生する早発性冠動脈疾患などの動脈硬化性疾患の発症と進展を予防することである.したがって,ホモ接合体・ヘテロ接合体ともに早期に診断し,早期に治療を開始しなければならない.生活療法は基本的に重要であり,喫煙,肥満,運動不足などの冠動脈疾患の危険因子をできる限り避け,糖尿病(耐糖能異常),高血圧症を合併する場合は厳重にこれらの治療も行う.しかしながら,FHでは生活習慣の改善のみではLDL-Cは正常化しないので,ヘテロ接合体では強力な薬物療法を行うが,単独では十分にLDL-Cを低下させることは困難であり,複数の薬剤を併用する場合が多い.しかしながら,FHヘテロ接合体の重症例ではLDLアフェレシスを行わざるを得ない場合もある.ホモ接合体では強力な薬物療法に加えて,LDLアフェレシスを施行する.本稿ではFHヘテロ接合体に対する薬物療法(PCSK9阻害薬は除く)について紹介する.
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