Japanese
English
特集 Acute Aortic Syndrome—最新の話題と今後の展望
腹部大動脈瘤の発症機序—炎症から
Pathogenesis of Abdominal Aortic Aneurysm:From the Aspect of Inflammation
今中 恭子
1,2
Kyoko Imanaka-Yoshida
1,2
1三重大学大学院医学系研究科修復再生病理学
2三重大学マトリクスバイオロジー研究センター
1Department of Pathology and Matrix Biology, Mie University Graduate School of Medicine
2Mie University Research Center For Matrix Biology
pp.429-434
発行日 2016年5月15日
Published Date 2016/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205950
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はじめに
腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm;AAA)は,血管壁,特に中膜,外膜に慢性炎症が引き起こされ,血管壁の支持組織である弾性線維を主体とする細胞外マトリックスの分解が亢進し,産生が抑制された結果,血管壁の組織脆弱性を来して不可逆的に拡張が進行する疾患である.粥状動脈硬化(以下動脈硬化)は,AAAと並んで最もよくみられる循環器疾患であるが,その本態はやはり慢性炎症と理解されている.
AAAと動脈硬化は,いずれも環境因子と遺伝性素因との複雑な相互作用による多因子疾患と考えられている.AAAの危険因子は加齢,喫煙,男性と動脈硬化のそれと重なっているが,脂質異常症,高血圧の寄与はあまり高くなく,糖尿病ではむしろAAAの発症が少ない.したがって,同じ慢性炎症という言葉で表されるAAAと動脈硬化は,一部は共通のメカニズムに基づきつつ,全く独立したメカニズムによって進展すると思われる.本稿では,動脈硬化と比較しながらAAAの本態である炎症について概説する.
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