増刊号 これで万全!緊急を要するエコー所見
2章 心エコー
急性大動脈解離
木村 豊
1
1帝京大学ちば総合医療センター検査部
pp.422-425
発行日 2020年4月15日
Published Date 2020/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542202332
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疾患の概要
疫学と病態
大動脈解離とは,日本循環器学会の「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011年改訂版)」1)によると“大動脈壁が中膜のレベルで二層に剝離し,動脈走行に沿ってある長さを持ち二腔になった状態で,大動脈壁内に血流もしくは血腫が存在する動的な病態”と定義されている.突然の激しい胸部または背部痛を主訴として発症する場合が多く,適切な治療が行われない場合には死亡率の高い疾患である.厚生労働省の人口動態調査によると,本疾患による死亡者は,毎年1万人弱程度となっている.発症原因は明らかではないが,高率に高血圧症を合併し,動脈硬化の危険因子の関与が示唆されている.またMarfan症候群などの結合組織疾患における,大動脈壁の脆弱性が発症原因となる場合がある.
典型的な症例では胸部痛や背部痛により発症するが,解離腔の位置および偽腔血栓化の状況によりさまざまな症状や病態を呈する.解離により冠動脈血流障害が生じた場合には心筋梗塞として,また頸動脈への解離進展により脳虚血を発症した際には,脳梗塞として治療が開始されている場合がある.これらの疾患の検査を行う際には,大動脈解離合併の有無を意識して検査を行う必要がある.
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