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特集 呼吸器病学 黎明期から現在
肺炎診療の黎明期から現在—肺炎診療ガイドラインを中心に
Transition of Practice Guidelines for Pneumonia in Japan
今村 圭文
1
,
河野 茂
1
Yoshifumi Imamura
1
,
Shigeru Kohno
1
1長崎大学病院第二内科
1Second Department of Internal Medicine, Nagasaki University Hospital
pp.365-371
発行日 2016年4月15日
Published Date 2016/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205938
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はじめに
肺炎は古来より多くの人類に死をもたらしてきた呼吸器感染症であり,特に抗菌薬がなかった時代にはインフルエンザのパンデミー(スペイン風邪など)に伴う二次性細菌性肺炎により多くの人が命を落とした.約100年前のわが国の死因の第1位は肺炎であった(図1).その後,ペニシリンをはじめとした抗菌化学療法の発達や医療環境,社会環境の改善により,肺炎の死亡率は急速に低下し,1970年代から1980年代にかけて,肺炎はもはや脅威ではないと思われるまでに至った.しかし,意外にもその後肺炎の死亡率は再上昇に転じ,2011年から肺炎は日本人の死因の第3位の位置を保ち続けている.
肺炎の死亡率が上昇している原因は複数あるが,特に影響が大きいのは超高齢社会という現代日本が抱える社会的な問題そのものである.他の要因としては,耐性菌の蔓延や,高度な医療の結果として生じる様々な免疫不全状態の患者の増加などが挙げられる.このように肺炎にとっては不利な状況が続くなかで,肝心の抗菌薬の開発はこの数年来滞っており,今後も新規抗菌薬の開発に大きな期待を抱く状況ではない.
したがって,肺炎の予後を改善するためには既存の薬剤の力を十分に活用し,また,不適切な抗菌薬使用により耐性菌の蔓延を助長しないことが極めて重要である.適切な肺炎管理を専門医のみならず非専門医も行うためには肺炎診療の手引となる診療ガイドラインの存在が不可欠であり,1990年代より欧米各国でまず市中肺炎の診療ガイドラインが発表されるようになった.
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