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はじめに
慢性閉塞性肺疾患(COPD)臨床と研究の歴史を紐解くとき,その展開の道筋を辿るには一般的には大きく2つのアプローチが考えられる.第一には時間軸に沿って変遷の概要を記載するものであり,第二にはCOPD研究の主要テーマのなかから特定のものを選定して検討を加える立場をとるものである.時間軸によるアプローチは形態学による揺籃期の検討を経て,大きなうねりは1940〜2015年までの75年の枠組みでほぼ捉えることができると考えている.さらにこのなかで2001年のGOLDワークショップ報告以前の60年とそれ以降の15年とに区分すると理解しやすい.先ず揺籃期を経て1940〜1970年は,疾患概念をめぐる論争は病理学や生理学的研究に準拠して,疾患名と病態解析,気道病変の局在,気流制限の検出法などが中心課題であった.次の2000年までの30年間においては分子生物学の呼吸器研究への導入が加速し,胸部CTの開発によって飛躍的に進歩した画像解析を駆使した病因論や臨床研究の進展も加わってCOPDに対する理解が深まった.2001年から2015年に至る15年間の進歩は最も目覚ましい.疫学,免疫学,遺伝子解析,遺伝子工学,再生医学などの新しい研究手法が多重的にCOPD研究に応用され次々に新知見を産み出した.新規薬物も続々と開発され,それを取り入れたCOPD診療ガイドラインが出版されて治療のパラダイムシフトが生まれた.臨床家が「COPDが治療可能な疾患である」と思える状況が現実になったのである.本稿ではCOPDの歴史に関する文献1〜6)を参照した年代別,テーマ別アプローチから教訓をくみ取り,最近の研究成果にどのようにつながっているのかを展望したい.
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