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肺癌薬物療法の進歩
肺癌に対する薬物療法は1983年白金(プラチナ)製剤であるシスプラチンが日本にて承認された後,シスプラチン単剤による治療が開始された.当初は入院にて大量補液とともに行われたが,腎機能障害,高度の消化器症状(催吐性)を伴った.1999年に第3世代殺細胞性抗癌剤としてゲムシタビン,ビノレルビン,パクリタキセル,イリノテカン,ドセタキセルが国内にて承認されプラチナ製剤との併用が行われた.上記治療に対する頻度の高い主な副作用としては消化器症状,骨髄抑制などが挙がり,とりわけ消化器症状としての悪心・嘔吐は本人の苦痛を伴い,ひとたび嘔吐した場合心理的な要因も含めた予期性嘔吐を発症する懸念があり,悪心・嘔吐の治療は予防が非常に重要となる.シスプラチン承認当初の制吐剤はステロイドのみだったのに対し,1990年代,第1世代セロトニン(5HT3)受容体拮抗薬の登場により治療24時間以内に起こる急性嘔吐が減少し,さらに2009年10月ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬(アプレピタント),2010年1月第2世代5HT3受容体拮抗薬(パロノセトロン)の各薬剤承認により治療24時間以降に出現する遅発性嘔吐に関してもコントロールが可能となってきた.このような背景のもと,以前は入院を必要とした化学療法も現在では外来にて行えるようになり,シスプラチン投与時の点滴時間を短縮したshort hydration法の国内における安全性も報告1,2)されている.
また,頻度の多い副作用として好中球減少症がある.好中球減少時の発熱性好中球減少(FN)はその大半は感染症であり,時に重篤になることがある.GCSF製剤はFNの発症率を抑えることが示されており3),FN発症を高めるリスクとして肺癌では,高齢者,前治療として放射線療法,化学療法を有する症例が多く,また重篤化リスクとしてCOPD合併例,高齢者が多いのが特徴である.日本ではGCSF製剤としてフィルグラスチム,レノグラスチム,ナルトグラスリム,が適応となっており,2014年血中消失半減期を長期化した持続型製剤であるペグフィルグラスリムも薬剤認証となっている.FNのリスクが20%以上の化学療法では,予防投与が妥当とされ,10%から20%の中等度リスクでも重症化のリスクを持つ個々の症例に応じ使用を検討することが推奨されている.また,GCSFの予防投与を受けていないFN患者では,高リスクの場合,GCSFの治療的投与を検討するとされている.
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