連載 おとめ山産話
平均余命と平均寿命
尾島 信夫
1
1聖母女子短期大学
pp.179
発行日 1986年2月25日
Published Date 1986/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206825
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平均寿命は0歳の平均余命であることは周知のことだが,これらはかなり人工的な奇妙な数字ともいえる。衛生統計学書には数学的に冷たく正しく書かれているが,どこかでごまかされているような心配がわく。そこで私と同様に,ピンとこない点が残る人のために,簡単な例から計算してみよう。生まれたばかりのパンダかコアラか,人工的には育てにくい動物10匹を預かったとする。満1歳になるまでに3匹死に,それから毎年2匹ずつ死んで,最後に生き残った1匹も5歳に達しないで4歳で死んだとする。この一族が最初1年間に生存した期間は1年間の平均匹数倍,1年×(10+7)1/2=8.5年とみられ,同様に2年目は(7+5)1/2=6年,それから同様の計算で,4年,2年と減っていって最後の年は(1+0)1/2年=0.5年となる。一族の総生存年数は以上を合計して21年となり,それを10等分して1匹あたり2.1年,これが実際の平均寿命である。一族の2歳における平均余命はといえば,(0.5年+2年+4年)÷5=1.3年となる。
さて人間の平均余命は,この例のように自然の結末をみてからでなく,まず10万人生まれたとしてそれに人為的な死(あるいは生)の運命をたどらせてそれから計算する。
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