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はじめに
近年,高尿酸血症や痛風の頻度が増加しており,生活習慣や環境の欧米化が主な原因と考えられている1).尿酸は生理的溶解度が6.4mg/dlであるが,尿酸結合性蛋白の存在により7.0mg/dlまでは過飽和状態とならずに存在可能であることから,高尿酸血症は,ヒトの体内で結晶が析出する血清尿酸値7.0mg/dlを超えるものと定義されている.しかし,血清尿酸値が7.0mg/dl以下であっても,血清尿酸値の上昇と共に生活習慣病のリスクが高まるとされる.特に女性においては,男性よりも低い血清尿酸値で疾患リスクが上がるため,より注意が必要である.
高尿酸血症は,メタボリックシンドローム,高血圧,糖尿病,脂質異常症,慢性腎臓病,肥満などが合併しやすく,血清尿酸値は食事や生活習慣,性別,利尿薬の使用などよって大きく変動することが古くから知られている2).これらの事実から,尿酸は生活習慣病の一部を見ており,あくまで心疾患のマーカーに過ぎないとの意見も多い.また,女性ホルモンは血清尿酸値の低下作用をもつ.女性は,閉経後に加齢に伴って血清尿酸値が上昇しやすいため,尿酸の評価が難しい.尿酸に関わるこれらの交絡因子の多さが,尿酸単独での研究を難しくしており,これまで尿酸単独での介入研究は数少なかった.しかし研究手法の進歩に加えて,フェブキソスタット,トピロキソスタットなどの新しい尿酸降下薬の登場も重なり,尿酸研究がより注目されている(図1).高尿酸血症が高血圧や慢性腎臓病の独立したリスク因子となることは明らかになってきたが,高尿酸血症が単独で心血管疾患の独立したリスク因子か否かについては明確な結論は出ていない.近年,小規模ではあるが尿酸降下薬の介入試験も行われ,狭心症の症状改善や,心血管疾患や心不全の発症予防をもたらすという結果も出てきた.最近の尿酸研究を含め,高尿酸血症の原因,高尿酸血症と高血圧,心血管疾患との関係を中心に解説する.
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