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リゾリン脂質とは
脂質には,コレステロールやトリグリセリドといった炭素,水素,酸素からなる単純脂質と,リン,硫黄,窒素,糖などをその骨格に含む複合脂質がある.複合脂質のうち,リンを含むものがリン脂質であり,そのうちグリセロール骨格をもつものをグリセロリン脂質,スフィンゴシン骨格をもつものをスフィンゴリン脂質と呼ぶ.脂質は,主に栄養脂質,構造脂質として生体内になくてはならないものであるが,複合脂質,特にリン脂質のなかには,強力な生理活性作用を有し,生理活性脂質といわれる脂質が属している.その一つがリゾリン脂質であり,一本の長い疎水鎖と一つの親水基からなる構造をしているリン脂質が分類される.リゾリン脂質のうち,グリセロリン脂質であるものをグリセロリゾリン脂質,スフィンゴリン脂質であるものをスフィンゴリゾリン脂質と呼び,それぞれ,いくつかの種類のリゾリン脂質が分類されている(図1).
リゾリン脂質は,その構造がゆえ,非常に高濃度では界面活性作用があり細胞傷害性があるが,近年,いくつかのリゾリン脂質に対して,その特異的な受容体も同定されてきており,リゾリン脂質は,エイコサノイドに次ぐ第二世代の生理活性脂質として注目を集めつつある.後述のように,グリセロリゾリン脂質のなかではリゾホスファチジン酸(LPA),スフィンゴリゾリン脂質のなかではスフィンゴシン1-リン酸(S1P)が最もよくその生物学的作用が研究されているリゾリン脂質である.本稿では,S1P,LPAを中心にリゾリン脂質の動脈硬化の関連を基礎研究,臨床研究から概説し,リゾリン脂質の「残存リスク」を克服するための新しいターゲットとしての可能性についてまとめる.
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