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特集 創薬を視野に入れた呼吸器疾患の病態解明
EMTによる耐性克服と創薬
Overcoming of Drug Resistance by Epithelial-Mesenchymal Transition and Drug Discovery
清家 正博
1
Masahiro Seike
1
1日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野
1Department of Pulmonary Medicine and Oncology, Graduate School of Medicine, Nippon Medical School
pp.555-560
発行日 2015年6月15日
Published Date 2015/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205723
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はじめに
上皮間葉形質転換(epithelial-mesenchymal transition;EMT)は,上皮細胞が線維芽細胞などの間葉系様細胞に形態変化する現象であり,またその逆の現象は,mesenchymal-epithelial transition(MET)と呼ばれる1).肺の炎症過程,組織修復やリモデリングの過程において,細胞がEMTにより細胞起源固有の細胞間接着因子を喪失させ,細胞骨格構造の変化に伴う線維芽細胞様形態の獲得により,細胞可動性・遊走性を向上させると考えられている.さらに癌細胞の浸潤や転移および薬剤耐性へのEMTの関与も明らかになった.癌の再発や治療抵抗性などに関与する腫瘍の源と考えられる癌幹細胞(cancer stem cell;CSC)として認識される細胞はEMTが誘導された状態にあり,また癌細胞に対してEMTを誘導するとCSCの性格を示すことから,EMTはCSCの性格を規定する重要な因子であるとも考えられている2).このようにCSCとも密接に関連するEMT制御は,癌の新たな治療戦略の一つであり,特にEGFR陽性肺癌におけるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)耐性克服とその根治に向けた治療標的として期待されている.近年肺癌におけるEMTの発生メカニズムの解明とともに,いくつかの薬剤を用いたEMT制御に関する興味深いデータが報告されている.
本稿では,肺癌におけるEMTの分子機構および薬剤耐性とその克服戦略を中心に概説する.
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