用語解説
EMT/MET
笹野 公伸
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1東北大学大学院医学系研究科病理病態学講座病理診断学分野教授/東北大学附属病院病理部部長
pp.66-66
発行日 2015年3月31日
Published Date 2015/3/31
DOI https://doi.org/10.34449/J0096.01.01_0066-0066
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癌細胞が転移病変を形成する過程を病理学的に考えてみると,以下のように幾つかのステップを経ることが分かる。①癌細胞が周囲の間質に浸潤して,脈管に達すること。②癌細胞が脈管の内皮細胞等の構成細胞を押し分けて浸潤し,体循環に入ること。③体循環の中で免疫系の細胞等の攻撃を回避して生存すること。④内皮細胞に付着して,脈管の構成細胞を押し分けて周囲の間質に浸潤すること。⑤転移先の組織で血管新生等を通して生体から十分な栄養を獲得し生着すること。この概念は,実は19世紀から病理学的にはよく知られてきたが,近年系統化されてきた,いわば古くて新しいコンセプトである。特に乳癌のような上皮性悪性腫瘍,carcinomaでは,上記の①,②の経過を辿るためには個々の細胞の極性,細胞間接着が低下もしくは喪失し(いわば上皮細胞の特徴を喪失し),間質や血管内皮細胞を破壊しながら浸潤するという(いわば間質幹細胞の特徴を獲得し)腫瘍細胞の性状の転換が行われる。
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