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VAPの予防〜最近数年間の話題〜
人工呼吸開始48時間以降に新たに発生した肺炎を人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia;VAP)と定義する.人工呼吸患者の肺炎発生率は非人工呼吸患者のおおよそ10倍と高い1).この理由は,気管挿管の手技,気管チューブや人工呼吸回路により,病原微生物の下気道侵入および排除機能低下がもたらされ,さらに宿主の免疫防御機能の悪化と相まって,肺炎が発症しやすくなるためと考えられる.さらに,VAPを発症した患者の予後は不良で,厚生労働省院内感染サーベイランス(JANIS)のICU-VAPサーベイランスでは,VAP患者の実死亡率は21%で重症度補正後の死亡率は非VAP者の1.3倍との報告がある2).2013年の海外報告では,VAP患者の死亡率と非VAP患者の死亡率の差を非VAP患者死亡率で割った寄与死亡率は10%程度と見積もられる3).したがって,人工呼吸を余儀なくされる患者群に対して,適切な予防策を適用しVAP発生を未然に防ぐことが重要である.
2000年代から,効果が期待される複数の予防策をまとめて患者に適応する“バンドルアプローチ”でVAPの発生率を下げる方法が世界的に推奨されてきた.日本でも,人工呼吸器関連肺炎(VAP)バンドル4)が提唱されている(表1).しかし2010年のバンドル発表以降も,これに含まれないVAPの予防策として,口腔を含む上気道内での病原菌定着と下気道への侵入予防に焦点を当てた知見が集積されつつある.この観点から,高濃度(〜2%)のクロルヘキシジンを塗布し口腔内病原菌を殺菌する手法(選択的口腔内殺菌:selective oral decontamination;SOD)5),口腔内のみならず消化管内全体を殺菌する試み(選択的消化管内殺菌:selective digestive decontamination;SDD)6),また善玉菌とされるプロバイオティクスを投与し病原菌量を減らそうとする試み7)がここ数年の間にメタ解析で評価されてきた.
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