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人工呼吸器関連肺炎(VAP)とは
人工呼吸器関連肺炎(VAP:ventilator-associated pneumonia)は,気管内挿管から48時間以上経過して発症した呼吸器感染症であり,特に,❶新たなまたは増悪する胸部浸潤影と,❷臨床所見3つ(38℃以上の発熱,白血球上昇・減少,膿性痰)のうち2つがあれば疑われる.「疑われる」と書いたのは,この基準が感度69%,特異度75%との報告もあり,診断精度が高くないからである.さらに他にもCPIS(clinical pulmonary infection score)など複数の診断基準があり,VAPの診断自体にコンセンサスが得られていないからである.
新たに2013年,CDC(アメリカ疾病予防管理センター)からVAE(Ventilator-associated event)という人工呼吸器関連の有害事象を広く含む概念が提案されている.これにはCDCの旧基準と異なり,自動的にカルテから抽出可能な量的指標が用いられている.2日間以上の人工呼吸器管理の後に酸素化が悪化すれば,まずVAC(ventilator-associated condition:人工呼吸器関連状態)に該当する.さらに感染や炎症の徴候を認めると,IVAC(infection-related ventilator-associated complication:感染症に関連した呼吸器合併症)に該当する.ここに膿性の気道分泌物や細菌検査の陽性所見があれば,基準に照らしてpossibleまたはprobable VAPと定義している1).これらはあくまでサーベイランス基準であり,治療目的の診断とは異なるが,今後の扱いに注目したい.
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