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はじめに
川崎病は乳幼児に好発する原因不明の発熱性疾患である.患者数は毎年増加傾向にあり,最近は年間の患者数が1万人を超える状況が定常化している1).川崎病に対する大量ガンマグロブリン療法が標準的な治療として定着し冠動脈後遺症を残す患者は減少したが,それでも約15〜20%の患者が治療抵抗性であり,約3%の患者に冠動脈後遺症を残す.川崎病により冠動脈瘤が生じた場合,冠動脈瘤の形態は経時的に変化し,遠隔期に狭窄病変を合併することが多くなることが知られている2).また川崎病の冠動脈後遺症により生じる心筋障害は無症状であることが多いため自覚症状がないことを理由に検査を行わないわけにはいかない.よって川崎病により冠動脈瘤が生じると患者は永続的な通院と頻回の検査が必要となる.冠動脈の形態評価には冠動脈造影(CAG)がgold standardな検査であるが高い侵襲性と放射線被曝が問題となる.近年のCT検査の目覚ましい発展によりCT angiography(CTA)でも短時間でCAGに匹敵するような画像を得られるようになったが,撮像には心拍数の制限が生じるため,心拍数の高い小児での検査は困難な場合もある.また以前と比較すると低減されたとは言え放射線被曝も問題である.心筋虚血,viabilityの評価においては心筋シンチグラムが多用されるが検査結果は相対評価となるため3枝病変例では評価が困難となることがある.また放射線被曝も問題となる.さらに検査前は絶食にする必要がありこの点も小児には不都合である.心臓MRIではMRCA(MR coronary angiography)による冠動脈形態評価のみならずcine MRIによる心筋壁運動評価,心筋perfusionによる心筋虚血,遅延造影法による梗塞部位の検出を一度の検査で行うことができ(comprehensive cardiac MRI study,図1),放射線被曝もない.検査の再現性は高く,体格や心拍数の制限もないため繰り返し検査を行える.また高い分解能を有するため核医学検査では評価が困難な心内膜下虚血や3枝病変例での虚血も検出可能となる.小児が対象となることが多く,長期間にわたり複数回の検査が不可避となる川崎病後遺症患者にとって心臓MRIは理想的なモダリティーである.最近では心臓用32chコイルや3T MRIが臨床現場で使用されるようになり,これまでよりも短時間で分解能に優れた画像が得られるようになってきている.川崎病後遺症の評価において心臓MRIの重要性はますます高くなるであろう.本稿ではわれわれの経験症例を呈示しながら心臓MRI検査を概説する.
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