Japanese
English
綜説
好中球エラスターゼと肺—とくにARDSの発生・増悪と関連して
Neutrophil elastase and the lung, with special reference to the pathogenesis of ARDS
小川 道雄
1
Michio Ogawa
1
1大阪大学医学部第2外科
12nd Department of Surgery, Osaka University Medical School
pp.1258-1269
発行日 1989年12月15日
Published Date 1989/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205588
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はじめに
白血球が蛋白を分解することは,すでに1888年にvon Müllerによって観察されている1)。その後Joch-mann1),Rulot2),Opie3,4)などが前世紀末から今世紀はじめにかけて白血球がフィブリンやフィブリノーゲンを分解しうること,あるいは喀痰中の顆粒球が蛋白分解能を有することを明らかにした。
好中球が肺病変の進展に何らかのかかわりを有していることは,すでにこの喀痰中に好中球が存在することからもうかがわれる。その後1964年には,肺気腫の発症にα1-プロテアーゼ・インヒビター(α1-PI)の欠損が関係していることが報告されている5)。α1-PIは好中球エラスターゼの強力なインヒビターであり,肺気腫の発生の一因として好中球エラスターゼの作用も推定される。現在ではrecombinantのα1-PIの投与が好中球エラスターゼの阻害活性を増大することが確かめられており,肺気腫治療のための基礎的実験が進められている6)。
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