今月の主題 好中球をめぐる検査
話題
好中球エラスターゼ
櫻林 郁之介
1
Ikunosuke SAKURABAYASHI
1
1自治医科大学大宮医療センター総合医学I講座
キーワード:
好中球エラスターゼ・プロテアーゼインヒビター複合体
,
炎症マーカー
,
蛋白分解
,
組織破壊
Keyword:
好中球エラスターゼ・プロテアーゼインヒビター複合体
,
炎症マーカー
,
蛋白分解
,
組織破壊
pp.457-460
発行日 1994年4月15日
Published Date 1994/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542901939
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1.はじめに
好中球の中には多くの蛋白分解酵素(プロテアーゼ)が含まれているが,その中に好中球エラスターゼ(または顆粒球エラスターゼ,granulocyteelastase; GEL, EC3,4.21.37)がある.この酵素は1976年にBaughら1)によって分離精製されたもので,分子量約30,000の3つのアイソザイムが存在するプロテアーゼで,膵臓から分泌されるエラスターゼIとは異なるもので,作製された抗体もまったく交差しない.
好中球は食細胞や炎症の刺激あるいは損傷を受けると,GELを放出し,血中ではプロテアーゼインヒビターであるα1)アンチトリプシン(α1)―AT)やα2)―マクログロブリン(α2)―M)とたちどころに結合し,不活性化された状態で存在している2)(図1).血中でのインヒビターとの結合は約90%がα1)―ATと,残りの10%がα2)―Mと結合していると推定されている3).したがって,GELの活性測定を行っても,血中ではほとんど検出されない(半減期は約60分間).現在では,GELそのものを測定するのではなく,インヒビターであるα1)―ATとの複合体(α1)―GELc)として抗体を用いて検出する方法が採られている.
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