Japanese
English
綜説
経口強心薬の作用機序と臨床
Mechanisms and clinical prophile of inotropic action of medicines for heart failure
矢崎 義雄
1
Yoshio Yazaki
1
1東京大学医学部第三内科
1The Third Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, The University of Tokyo
pp.1271-1277
発行日 1989年12月15日
Published Date 1989/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205589
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに生薬として臨床に導入されたジギタリス薬を中心とした強心薬は,心疾患の最終病態である心不全の血行動態を著しく改善するものとして,その臨床的な評価は確立したものとなっている。さらに,心筋の収縮機序に関する知見が進展するにともなって,強心作用を有する薬物の開発が理論的に行われるようになって,数多くの新しい強心薬が臨床治験されるようになった。
ところが強心薬は確かに心不全における血行動態を改善する,すなわち器官のレベルでは著しい機能の改善効果を認めるが,細胞レベルではその病態を改善するものではなく,心筋酸素消費量の増加などによって,むしろ心筋の収縮力低下の基礎となっている代謝障害を促進させる可能性が指摘され注目されている。最近の臨床的な検討においても,強心薬は長期投与により心不全患者の予後を改善するものではなく,なかにはかえって悪化させる場合があり,その臨床的な有用性についても再び議論されるようになった。
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.