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経食道心エコー図法の進歩:TEE,カラーTEE,そしてバイプレーンTEE
心エコー図法は本来が無侵襲的な方法であったが,この方法の拡大として,ちょうど内視鏡のように,その先端に超音波トランスジューサを装着して,経食道的に心機能を検査するやや侵襲的なアプローチが以前より試みられてきた1〜5)。この方法が経食道心エコー図法(transesophageal echocardiography, TEE)と言われるもので本稿のテーマである。はじめは"Mモード"のみであったが,その後は"断層"も可能になった。無侵襲的な心エコー図法をわざわざ半侵襲的な経食道的手法へ拡大させた理由にはいろいろある。その目的の主なるものは,①心機能のモニタ(左室壁運動の分析),②大動脈瘤—特に解離性大動脈瘤—の診断と術中評価,③弁形成術の術中評価,④冠動脈の映像化,⑤各種の心臓大血管手術の術中評価,⑥巨大左房の検索,⑦左房血栓の検出⑧僧帽弁位人工弁患者の左房検索(人工弁機能不全の検査)などあった。確かに,TEEにはいろいろのメリットがあるが,特に"左房と食道とが接している"ことのメリットは,上記の③,⑥,⑦,⑧で認められている。また一方,"下行大動脈と食道とが接している"ことのメリットは,上記の②,⑤で認められている。また,手術野に対して感染の危険なしに連続的にモニタできることから,①,⑤の応用が重要である。確かに,上記の①〜⑧のメリットは大きいが,この方法が急速に普及をみたのは,ドプラ断層法(カラードプラ法)の技術とTEEとのドッキングがなされた1986年以降である。それ以後は"TEE"が"カラーTEE"となり,それは,もはや研究的でなくて,きわめて実用的な検査法として,どの施設でも必須なものとなりつつある。
カラーTEEは現在すでにその有用性の故に心臓外科や心臓病学の領域,あるいは麻酔科領域できわめて急速な普及を果たした6〜12)。この方法によって単に心臓のgeometryのみでなく,心内血流がモニタされるべき対象に加わったことになる。血流が見えることの臨床的メリットは大きい。ドプラ断層(カラードプラ法)では,血流の①方向,②平均流速,そして③乱流の程度の3つの情報がリアルタイムにカラーで表示される。血流方向は,トランスジューサに相対的に近づくもの(赤色)と遠ざかるもの(青色)とに区別されて,2色のカラーでディスプレイされる。心腔内における弁逆流や心内シャントなどの異常な血流は乱流であって,ドプラ断層ではモザイクパターンでディスプレイされる。ドプラ断層そのものの詳細な説明は誌面の制限から他にゆずる13)。
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