Japanese
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解説
重症ジギタリス中毒に対する抗体療法
Treatment of life-threatening digitalis intoxication with digoxin-specific Fab antibody
佐藤 重仁
1
Shigehito Sato
1
1土浦協同病院麻酔科
1Department of Anesthesia, Tsuchiura Kyodo General Hospital
pp.1055-1060
発行日 1989年10月15日
Published Date 1989/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205555
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はじめに
マムシやハブの咬症による中毒では,特異的免疫療法として独自の抗毒素血清が投与されてきた。つまり,ヘビ毒の抗原性を利用し,ウマの血清などを媒介として抗体を産生できるからである。これに反し,薬物中毒では特異抗体による治療法がこれまで開発されなかった。当然であるが中毒の原因となる薬物が抗原性を有しないため,特異抗体の製造が手技的に難しかったのである。
しかし,近年ジゴキシンに対する抗体が欧米で製造販売され,重症のジギタリス中毒の治療に用いられるようになった1)。これまでの薬物中毒の治療は対症療法が基本であったのに対し,この治療法は抗体を中毒の解毒薬として使用し,生物学的に毒物の中和を計ろうとする画期的なものである。重症のジギタリス中毒にジゴキシン抗体が著効を示すことが現在まで多数報告されてはいるが,量産する研究が進んでいないため高価であること,投与を開始する際の臨床的使用基準が明確にされていないことなどの問題も残っている。日本では未発売で入手不能なため,著者がパリ中毒センター2)に留学していた間に経験した2症例を紹介し,ジギタリス中毒に対する抗体療法の現状について述べる。
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