臨時増刊特集 これだけは知っておきたい治療のポイント 第2集
II.循環器疾患
1.うっ血性心不全の治療
ジギタリス中毒のみかたとその対策
宮下 英夫
1
,
佐藤 友英
1
1帝京大第1内科
pp.1765-1767
発行日 1978年12月5日
Published Date 1978/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402208142
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はじめに
ジギタリスは元来,治療域と中毒域との範囲の非常にせまい薬剤の一つであり,個体による反応差が大きく,また他の薬剤との併用により効果の差のある薬物である.たとえば十分な治療効果を得るためには中毒量の50%が投与されるし,中毒時には致死量の60%が投与されていることもある.老人や基礎心疾患の重篤な例では治療域と中毒域との差はさらにせまくなり,中毒を起こしやすくなる.また最近では強力な利尿剤の併用による電解質異常,ことに低K血症,低Mg血症,低Na血症が増したこと,さらに平均寿命の延長による老人の増加によりジギタリス中毒は明らかにふえつつあり,投与例の10〜20%に発生し6),しかもジギタリス中毒の患者の40%は死亡するとの報告もある1).
ジギタリスを処方する医師は,その適応を知るのみでなく,ジギタリス中毒の早期徴候を熟知することが大切である.ジギタリス中毒に特徴的で,それのみで診断可能な,いわゆるpathognomonicな徴候はないので,患者の臨床症状,ジギタリス不整脈などの発現に注意し,血中濃度を参考にして早期発見につとめ,ジギタリス中毒をきたすことなく有効な治療を行うべきである.
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