Japanese
English
綜説
脳の酸塩基平衡と呼吸調節
Acid-base balance in the brain and control of berathing
西村 正治
1
Masaharu Nishimura
1
1北海道大学医学部第一内科
1The First Department of Medicine, Hokkaido University School of Medicine
pp.362-373
発行日 1989年4月15日
Published Date 1989/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404205452
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はじめに
脳の酸塩基平衡は生体のあらゆる生理的,病的現象と深く関わっている。そのため中枢では比較的アプローチしやすい脳脊髄液(CSF)がさまざまな意味で研究の対象となったのはすでに今世紀初頭にさかのぼる。脳内の出来事を反映していると考え,あるいは逆にCSF組成の変化が脳機能に影響を及ぼすとの認識から研究者の目はCSFの容量,組成,産生機序,酸塩基平衡,自律神経調節における役割など多くの方面に向かった。しかし,呼吸生理学者が呼吸調節との関係から中枢の酸塩基平衡調節機序に関心を持ち始めたのは,Leusenが人工脊髄液の脳室灌流によって呼吸のH+感受性を直接証明したことに始まるといってよいだろう1,2)。それに引き続き,Mitchell, Loeschckeら3,4)とPappenheimerグループ5)は延髄腹側表面にある化学受容野の存在を実証した。以来,この数10年間に呼吸調節との関わりから行われた研究は膨大な数にのぼり,優れた英文総説も数多く出ている6〜13)。限られた紙面の中でその歴史的経過すべてを紹介することは不可能に近い。ここでは比較的最近の研究動向に的をしぼり主として生理学的アプローチからみた新しい研究の流れについて紹介したい。
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